ゲノムプロジェクトの成熟により、さまざまな病因や発症メカニズムが遺伝子レベルでわかる時代が到来し、万病が消散するかに思えました。確かに近代医学は感染症などの急性疾患や交通事故などの外傷では威力を発揮します。しかし、病因そのものを見つめ過ぎるあまりに人間としての患者様を見失ってしまったのも事実で、生活習慣病や慢性疾患では十分な治療成果を上げていません。一方で、全身や生活習慣・環境も含めて総合的な観点から治療を行う伝統医療は慢性疾患には適しているものの、感染症や外傷には非力ですし、数千年間進歩がないという弱点があります。こうした現状を打開し、新しい医療を創世すべく2002年に統合医療ビレッジは義に召されて産声を上げました。
グローバルなクリニックモールとして、医療改革の中核になるべく各医療のトップ、日本を代表する医師、研究者が集結。患者様を直接診療する臨床部門「プルミエールクリニック」と先端医療の可能性を探求する「付属研究所」、そして統合医療人の育成を担う「統合医療臨床アカデミー」が三位一体となって、患者様の体と心に向き合う真の統合医療を体現すべく、日々真摯に取り組んでおります。
ここで言う統合医療とは旧来西洋医学と代替医療の単なる融和ではありません。統合医療ビレッジ参加者の英知と英断をもって一度従来の医学体系を解体し、個人差を重視しながら体内、精神、生活、社会などの環境要因までも考慮した新医学体系を再構築することと心得ます。それにはそれぞれのスペシャリストの協調が何より大切であり、その中心にはオーケストラのコンダクターのような存在となる「統合医療医」は必要不可欠です。広く浅くすべての医療分野に通じる統合医療医の指揮のもと、免疫治療やサイモントン療法などのスペシャリストたちが持ち味を発揮し、一つのシンフォニーを作り上げるような形で運営できれば、患者様に満足していただける質の高い医療を提供できるものと確信いたします。
統合医療医の役目としては十分なカウンセリングをもとに適切な専門医に患者様をつなぐことがあげられます。例えば、アレルギーの患者様に対しては免疫療法、食事指導などをアレンジし、治療の最後には統合医療医が総合診断をします。また、難しい症例の患者様に対するケースカンファレンスでは、それぞれのスペシャリストを集めて検討し、最終的には統合医療医が意見を取りまとめております。
この10年間で多くの患者様と向き合ってきた経験を踏まえ、今後のターゲットを2つに絞りたいと考えております。
1つは難治性がん治療で、がん難民と化した患者様に対して積極的な治療を施してまいります。もう1つは、腎不全、脳梗塞、肺気腫、難治性疾患に対する再生医療です。この2つの目標を達成するには、従来の医学知識だけでは限界があります。そこで2010年、医療に新たな息吹を吹き込み、将来の統合医療の中核をなす治療法を開発するために未来研究所を設立いたしました。未来研究所は、「樹状細胞治療」と「幹細胞治療」を誕生させるという成果を上げ、2015年には細胞医療の培養・検査を行う中央研究所と1つに統合し、プルミエールクリニック付属研究所 Astron Institute へと名称を変更いたしました。
長年の研究がノーベル医学生理学賞(2011年)を受賞した樹状細胞を活用した治療は、難治性がんの可能性を広げるものとして注目を集めています。一方、幹細胞を活用した再生医療は腎不全、肝硬変、慢性肺気腫といった難治性疾患にとって明るい話題となっております。
我々の統合医療運動は小規模な里村としてスタートしましたが、着実にその輪を広げております。十分な鍛錬の後やがては町となり国家となる日を旭光のもと夢想しながら挨拶とさせていただきます。